人口問題は人間が小さくなれば解決するんじゃないか

 大学の授業で様々な社会問題について、クラスメート達とディスカッションを行うということがよくあったのだが、僕はこの時間がたまらなく嫌いだった。何かの問題についてみんなで討論すること自体は好きでも嫌いでもないのだが、ディスカッションのテーマが良くない。「世界平和に対する国連の役割とは」だの「アメリカの銃規制についての賛否」など、明らかに大学生の身の丈にあっていないのである。そんな壮大なテーマを馬鹿な学生が乏しい知識で語り合うということがいたたまれなかった。自分の力では解決できないことを雄弁に語ることほど無責任なことはないと思う。テーマをもう少し卑近なものにして、「どこからがセクハラなのか」とか、「最近横行している自転車ドロボーを防ぐためにはどうすればよいか」などというものであれば、もう少し真面目に取り組めていたのになあと思う。
 上記のような理由で、僕はディスカッションの時間になると積極的に発言することを避けていた。静かにしていなければならない講義の時間は私語をしまくって授業を妨害するくせに、喋ることが許されたディスカッションの時間になると途端に口を閉ざすのだからタチの悪い学生である。
 僕がディスカッション中に口を開くのは、教授から、おまえさっきから黙ってるけど発言しないと単位やんないからなと脅迫された時に限定されていた。そういう時でも他の優秀な学生のように真っ当な発言をするのは嫌だったので、斜に構えてふざけた発言をすることにしていた。おかげでディスカッションのあるクラスの成績は芳しくなかったような気がする。(こう書くとディスカッションのないクラスの成績は良かったかのように聞こえるが、その他のクラスについても成績は押しなべて悪かったので安心していただきたい。)
 毎回適当なことを話していたので、自分がどんな発言をしたのかあまり覚えていないが、ひとつだけ印象に残っているものがある。世界の人口問題についてディスカッションを行っていた際、「今後も世界人口は増え続ける見通しだが、最も深刻なのは食糧問題である。どう対処すればよいか。」という流れの時に発言を求められたので、その場で思い付いたことを述べた。「人間が半分の大きさになれば、食べる量も住むスペースも半分でよくなるから、みんなで小さくなればいいんじゃないか」というような事を言ったのだが、「おまえに発言させるんじゃなかった」という顔をされた。自分としては名案だと思っていたので、この件はいまだに腑に落ちないでいる。「変な病気を流行らせて人口を意図的にコントロールすればいい」という案も頭によぎったのだが、それに比べればよっぽど人道的かつ建設的ではないか。
 今の段階では全く現実味がないのかもしれないが、将来科学技術の発展によって、生物を小型化することは不可能なことではないように思う。服用すると大きさが10分の1になる錠剤かなにかが開発されたとしたら、地球上のみんなでいっせーのせで飲めば良いのである。そうすれば次の瞬間、1人前のステーキも10人前になり、より多くの人の胃袋を満たすことができるのだ。
 もしマッドサイエンティストの方がこの記事を読んでいたら、すぐに生物を10分の1にする薬を開発し、地球上の全生物に服用するように奨めてもらいたい。僕は飲んだフリをして、自分だけ小さくならずに世界征服に乗り出すつもりである。もし映画監督の方がこの記事を読んでいたら、これをネタに全米第一位の超大作を撮影してもらいたい。