メダンに行ったら牛肉を食らうべき・・・なのか?

 前回の記事ではインドネシアジャカルタについて書いたが、ついでに2014年の夏に訪れたメダンという都市についても書いておこうと思う。メダンはインドネシアで四番目に大きな都市であるらしい。上位三都市がジャワ島にあるのに対して、メダンはスマトラ島にある。スマトラ島といえば2004年に大津波に襲われたことが記憶に新しいが、被害が甚大であったのはスマトラ島の北端部であったらしく、東北部に位置するメダンにはそれほどの被害がなかったとのことである。
 前述の通り、僕がメダンを訪れたのは昨年の夏のことであるが、今のところそれが最初であり最後の訪問である。しかも滞在したのはほんの3,4日ときているので、特にメダンについてよく知っているわけでもない。とても偉そうに記事など書けるような身分ではないのだが、インドネシア第四の都市であるにもかかわらず、あまり日本語でメダンのことについて書かれた記事がない。もしかすると、これから初めてメダンを訪れる日本人も多少は増えてくるかもしれないので、参考までに書かせていただくとする。
 おそらくメダンを訪れる人が最初に降り立つ場所は、多くの場合、クアラナム国際空港ではないかと思われる。僕は羽田空港からシンガポール経由でクアラナム国際空港に到着した。行く前はどうせ片田舎の辺鄙な空港だろうと思っていたが、着いてみるとなかなかどうして近代的で綺麗な空港である。聞くところによると、2013年7月に出来たばかりの新しい空港ということである。決して数は多くないが、レストランや土産物屋などもそこそこあり、ジャカルタスカルノ・ハッタ国際空港なんかよりも余程使いやすいところである。空港の周りの道路も綺麗に整備されていたが、辺りには空港の他に何もないところが残念である。おそらくはこれからどんどん開発が進んでいくのだろう。
 空港からメダンの街まで行く手段は車に乗るか電車に乗るかの二者択一だが、僕としては電車に乗ることをお勧めしたい。僕の場合、往路は着いたばかりで電車があることを知らなかったため、車に乗って街まで移動し、その後空港に戻る際に電車に乗ってみたのだが、安くて速いうえに、景色も素晴らしかったので、初めから電車に乗れば良かったと後悔した。空港からメダンまでのチケットは通常は8万ルピア(約900円)だったが、僕が訪れた時は何かのキャンペーンで6万ルピアで乗ることができた。車窓からは広大な田畑を牛や山羊が歩いている様子が見えたり、街が近づいてくると、線路のすぐ脇に民家があったりするので、メダンに住む人々の生活を感じることができるのである。今まで住んでいた家の至近距離にガタガタうるさい電車を通され、その上乗客に生活を感じられてしまうメダンの人にとっては迷惑千万な話ではあるが、一人の訪問客としてこれほど楽しいものはない。おまけに席に座っていると、乗客同士でお菓子を回し食いしていたりしていて、人々との触れ合いも楽しめて一石二鳥である。
 電車に揺られること30分、空港からノンストップでメダンの街に到着する。駅やホテルの人におすすめの観光スポットはどこかと聞くと、大抵困った顔をされる。車で大分走ったところに有名な湖や寺院があるらしいのだが、そこまで本格的に観光をするような余裕はない。街の中でどこか面白いところはないかとTrip Advisorでメダンの観光スポットを検索してみると、なんと上述した電車が栄光の第一位に輝いていて思わず噴き出してしまった。メダンの街はそれほどまでに何もない所なのである。敢えて良くいうのであれば、これからの街であるということだ。
 こうなったら自分の足で歩いてみようと思い、小雨が降る中をテクテクあるいていると、駅の向こうに少し豪華に見えなくもないデパートが見える。入ってみると、このデパートはCentre Pointという名前であるらしい。僕が行った時は6階ほどの建物の中に、そこそこ高級な店が結構入っていた。レストランも中華や日本料理なども入っていて、飯を食うのに困ったらとりあえずここに行けば良いという感じである。
 さらに歩いていくと、19世紀に中国からメダンにやってきて、農園を作ったり商売をして儲けた金でメダンの街を発展させたというTjong A Fieなる華僑が住んでいた家が当時のまま残されていて、見学料を払って中に入ることができる。ご想像の通り、メダンは日差しが強くて暑いところなのだが、Tjong A Fieの邸宅は風通しが良く、日差しが入ってこない造りになっているのか、とても快適である。僕が訪れた時には、他に見物客は誰もおらず、暇を持て余していたガイドの女の子が3,4人でTjong A Fieの業績や一族について、ああでもないこうでもないと解説してくれたのだが、いまいち良く分からなかった。
 僕が訪れたメダンの観光スポットはこのくらいのものである。敢えて行くような街でもないが、行ったら行ったでなかなか楽しい街ではあると思う。僕自身も機会があったらもう一度くらいは行ってみたいと考えている。というのも、メダンはジャカルタに比べて食べ物が美味しかったという印象があるからだ。メダンに行くことが決まった時に、僕はインドネシア人の知り合いから、「メダンはシーフードが有名である」ということを聞かされていた。現地の人にシーフードレストランに連れて行ってもらい、海老やウナギを揚げた料理を食べさせてもらったところ、確かに大変美味い。素材の味もさることながら、味付けが醤油ベースで日本人好みなのである。また、例のCentre Pointというデパートの向かいに小さな食堂があり、そこでラーメンのようなものを食わせてくれるのだが、これがなかなか美味いのでおすすめである。このような醤油ベースの味付けや、ラーメンのような料理があることは、前述のTjong A Fieのように、中国から商売をしにやってくる人々が多いようなので、その影響なのかもしれない。いまだに具体的にどんなことを成し遂げたのか分からないが、もしメダンの料理の味付けがTjong A Fieの影響であるならば、これだけでも大した快挙である。
 シーフードやラーメン以上に僕がやみつきになったのは、牛肉料理である。ジャカルタでは牛肉の骨から取ったスープは良く飲まれているが、欧米風にステーキやハンバーガーなどにして食べる以外に、牛肉そのものを食べることはあまりないように思う。メダンの中心部にあるムルデカウォークという広場の食堂で牛肉料理を頼んでみたのだが、鉄板の上に焼かれた牛肉が甘辛いタレとほどよくマッチしてなかなかの美味であった。同じ食堂で出てきた牛骨のスープも飲んでみたが、ジャカルタで飲むスープ以上に濃厚で美味しかったが、牛肉を食べるためだけにメダンに行きたくなるというほどのものではない。