世界中全ての国を旅する必要なんてない

 ゴールデンウィークよりも少し早目に休みを取って、イギリスは北アイルランドスコットランド、イタリアは南はナポリから北はミラノまで行ってきた。旅行をしていた期間は機内泊も含めて10日間だが、多くの場所を訪れることができて良かったと思うと同時に、なんと慌ただしい旅行であったことかと呆れるような思いもある。
 個々の行き先についての記事は今後おいおい書いていきたいと思うが、旅行に関する考え方を見直した方が良いのかもしれないと思い始めている。何年か前に、インドネシアバリ島に旅行した時に少しだけ言葉を交わしたオーストラリア人は、仕事を休んで2ヶ月ほどここに滞在する予定だということを言っていた。その間、特に何をするということもなく、プールサイドやビーチサイドで寝転がったり、街を散歩したり、ビールを飲んで過ごすのだという。それに対して僕らの滞在期間はほんの3、4日であった。そんな短い期間に、ここも見たいあそこも行きたいと予定を盛り沢山に詰め込むものだから、休暇中にもかかわらず、仕事をしている時と同じくらい、あるいはそれ以上に時間に追われているような気になってしまい、休むはずが余計に疲れてしまうなんてことになってしまう。
 今回の旅行においても、ヨーロッパに行く機会なんて一生のうちにそう何度もあるわけではないので、ここも行かなきゃあそこも行かなきゃと、欲張って予定を詰め込みすぎた感がある。僕は子供の頃から世界中の色々な場所を冒険して、世界にある全ての国に足を踏み入れることが夢であった。この途方もなく大きな地球のありとあらゆる地面に自分の足跡をつけ、この世界の絶景と言われる景色の全てを自分の目に焼き付けなければという使命感のようなものに駆られていたのだと思う。しかし、実際一人の人間が使える時間も金も限られている。今から十代に戻ることができればその使命も達成できるかもしれないが、今の僕はその使命が実はあまり大したものではないということに気付き始めている。
 旅はただ行き先に辿りつくものとすべきではなく、そこまでの過程を楽しまなくては意味がない。世界中の全ての国に行くことよりも、自分の足の及ぶ範囲の中で、居心地のよい場所を見つけて、そこで長い時間をゆったりと過ごすことが人生を豊かに過ごす秘訣ではあるまいか。それが例えばパリのカフェであっても、近所の公園のベンチであっても構わないのだ。・・・ということに今更ながら気付けたのはいいものの、次の旅行が出来るようになる頃にはそのことをすっかり忘れて、また時間の限り色々な目的地を詰め込んでしまうような気がする。