電子書籍は僕を浮気者にする

 世の中の読書家と呼ばれる人達には遠く及ばないが、本を読むのは好きな方であると自負している。そして困ったことに本を買うことは本を読むこと以上に好 きである。本を買う時は「これを読みたい」と思って買うのだが、ひとたび買ってしまうと「買った」というだけで満足してしまうのか、そのまま一度も開かず に書棚の肥やしになっている本が何冊もある。本を買っただけでそこに書いてある情報や知識を吸収したつもりになっているであれば困ったことであるが、これ は癖のようなものでなかなか直すことができない。まあ買ったものはいつかは読むだろうと気長に構えているしかない。
 買った本を読まないという悪 癖は僕に限ったことではないらしく、世の中には「積ん読」という用語まであるようだ。書籍というのは一冊だけならばさほどではないが、何冊にもなると保管 しておくだけで膨大なスペースを要する。ただでさえ狭い家が読まない本によってますます狭くなってしまう。
 電子書籍というのは、そんな積ん読病 の患者にとっては救世主かもしれない。僕自身も数年前にAmazonkindle paperwhiteを購入したが、ちょうど文庫本ほどの大きさの端末に何千冊分もの書籍データを保存することができる。電子書籍のおかげで紙の書籍を保 管しておくスペースが省略できるというのは、狭い家に住まざるを得ない日本人にとってありがたいことである。書棚があるため八畳の部屋を借りなければなら なかったが、全ての本を電子書籍に保管できれば六畳間で済むので経済的ではないか。
 電子書籍を使い始めた頃はそんなことをぼんやりと考えていた のだが、実際に使ってみると、案外そうでもないかもしれないとも思い始めている。出張などで遠出をする時にはkindleを携えていくのだが、ひとつの端 末に何冊もの書籍が入っているため、一冊に集中することが難しいのである。どんなに良書であっても、本を読んでいれば途中で行き詰ることもあろう。そんな 時に手元にこれ一冊しかないという状況であればこそ、石にかじりつく気持ちで読み通すという努力もできるものである。他に何冊も読める本がある、となって しまうと、今読んでいる本に飽きが来たら別の本を読めばいいという安易な方向に流れてしまい、結局どの本も最後まで読まずに放ったらかしになりやすいので はなかろうか。勿論これは使用する人間の問題であって電子書籍そのものには全く罪はないのだが。。。
 昔は本を一冊手に入れるのも大変だったため、読書をする人はどこぞから本を借りてきては寝る間も惜しんで書き写し、何遍も読んでいたという話を聞くと、一冊に懸ける想いというのも時代とともに変わるのだなと思う。