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アンダーソン・バレジャオの苦労がようやく報われた・・・と言えるのか

 NBAの2015−2016シーズンのファイナルは、下馬評通りゴールデンステート・ウォリアーズとクリーブランド・キャバリアーズが戦うことになった。両チームは昨年のファイナルでも対戦しているが、軍配はウォリアーズに上がっている。果たして今年はキャバリアーズのリベンジなるか、というのが注目されるところである。昨年のファイナルにおいて、キャバリアーズは主力選手を怪我で欠いていたが、今年は万全の体制で臨むことができる。一方のウォリアーズは西カンファレンスのファイナルにおいてオクラホマシティ・サンダーに対して1勝3敗と土俵際まで追い込まれたが、そこから奇跡の3連勝を遂げ、2連覇を目前に見据えている。個人的にはウォリアーズの方に一日の長があるのではないかと考えているが、僕の予想はいつも当たらないし、この記事の趣旨は勝敗の行方を占うことではない。
 ウォリアーズとキャバリアーズの激戦が予想されるなか、早々とチャンピオンリングを手中に収めることがほぼ決定している選手が一人だけいる。アンダーソン・バレジャオという、今はウォリアーズに所属する選手である。なぜ彼だけがチャンピオンリングを手に入れることが決まっているのかと言うと、彼は今シーズン途中までキャバリアーズの一員であったからである。一員であるどころか、彼はNBAに入ってから10年以上、キャバリアーズ一筋で頑張ってきた古株である。10年の間、彼はチームのエースであるレブロン・ジェームズを攻守にわたり、身体を張ってサポートし続けた。彼の献身的なプレーに対し、クリーブランドのファンは敬意を表して、彼の特徴的な髪型を模したカツラをかぶって声援を送った。
 やがてレブロン・ジェームズクリーブランドを去ってマイアミに移籍し、チャンピオンリングを手に入れたわけだが、バレジャオは一人クリーブランドに残ってプレーを続けた。スター選手のジェームズが去ってしまったクリーブランドは弱小チームとなり、単なる片田舎の弱小チームに転落してしまったわけだが、それでもバレジャオは腐らずにクリーブランドに留まり、黙々とプレーをし続けた。そして去年、レブロン・ジェームズが再びクリーブランドの地に戻り、ようやく悲願のチャンピオンシップに手が届くかというところで、今度は彼の方がトレードによりチームを離れることになってしまった。それでも彼にとって幸運なのは、移籍先が前年度の覇者であるゴールデンステート・ウォリアーズだったことである。
 ウォリアーズは今シーズン、前人未到のシーズン73勝を収め、途中危ない場面もあったが、ファイナルまで駒を進めた。一方、古巣のキャバリアーズも東カンファレンスは敵なしとばかりに余裕のファイナル進出を遂げた。両方のチームに所属したバレジャオは、どちらが勝ってもチャンピオンリングを手に入れる。聞くところによると、NBAファイナルで対戦する両チームに所属した選手というのはバレジャオが史上初だそうである。厳密に言えばクリーブランドが勝利した場合、バレジャオにチャンピオンリングを授与するかどうかはキャバリアーズが決めることになるそうだが、長年チームを支え続け、ファンの人気も高い彼にリングを与えないことはないのではないか。苦節10年以上の苦労もこれでようやく報われるな、と大したファンでもないのにもかかわらず、彼のこれまでの健闘を大いに祝いたい気分でこの記事を書き始めた。
 ところが、書き進めながら彼の胸中を察するに、いずれのチームが勝利して、チャンピオンリングを手に入れたところで、果たして彼は嬉しいのだろうかという疑問が浮上してきた。仮に現在所属しているウォリアーズが勝利したとしても、所詮彼は新参者で、実のところ大したプレータイムも与えられていない。対するキャバリアーズが勝利しても、いくら長年在籍して愛着のあるチームとは言え、今の自分にとっては敵チームで、それに敗れた形でリングを手に入れることになる。リングを手に入れることが決まったとはいえ、案外彼の中には複雑な思いが去来しているのではないかと思われるが、彼が今何を考えているかは彼だけにしか分からない。