トランプ大統領の誕生に思うこと

 アメリカの第45代目の大統領にドナルド・トランプ氏が就任した。果たして1年前にこの人が本当にアメリカの大統領になると信じていた人がどれほどいただろうか。もしかしたら一番驚いているのはトランプ氏本人なのかもしれないと思ってしまったりもする。大統領選のキャンペーンの時から、ドナルド・トランプという男が、アメリカという国で徐々に頭角を現してきたことについて考えさせられることが多くあった。断片的ではあるが、以下に自分の考えをまとめておきたい。
 
 ・よくテレビなんかで、「政治家は建前ではなく、もっと本音で語ってほしい」という言葉を耳にする。「本音で語る政治家」というものが具現化したのがまさにドナルド・トランプ大統領なのではないか。よくよく考えてみると、人間の本音などというものはワガママで、甘ったれで、攻撃的で、僻みっぽいだけのものだ。そんなものは居酒屋に行けばいくらでも聞ける話で、少なくとも政治家の発言に求めることではなかろう。
 
 ・トランプ氏は、選挙戦の時から「アメリカをもう一度すげえ国にする(make America great again)」というフレーズを多用し、商標登録までしてしまったらしい。ここで注目すべきは「again」という単語である。「again」というからには、アメリカは今はすげえ国ではないということなのだろう。それではアメリカが「great」だった時は一体いつのことなのか。僕の知る限り、トランプ氏は、彼自身の言うアメリカがすげえ国だった時がいつなのかということについて、あまり語っていないように思える。アメリカが「great」だったのはいつなのかということについて、トランプ大統領から詳しい説明があれば、彼がアメリカをどのような国家にしたいのか具体的なイメージが持てるのではないかと思うが、おそらくトランプ氏は、選挙期間中に敢えてそこには触れなかったのではないか。彼は、ある程度年を取ればみんながぼんやりと抱く「昔は良かった」というノスタルジーに対して訴えかけたのだろう。選挙の結果を見れば、それは功を奏したと言えるが、今後、トランプ大統領がこの具体性に乏しいスローガンをどのように実行していくかが見ものである。
 
 ・トランプ氏は大統領選に勝ったのにもかかわらず、当事者のアメリカ人でさえ、彼のことを悪く言う人の方が圧倒的に多い気がする。インターネット上で自分の考えを発信したり、海外に出ていって仕事や勉強をしているような、いわゆる開明派の人達は、半トランプ派ということなのだろう。一口にアメリカと言っても、それはとても広大で、特に中部の方には、メキシコ人やムスリムが入ってくることを嫌う保守的な人々が、僕達の想像が及ばないほど大勢いるのだろう。
 
 ・大統領選の結果について、ロシアの関与があったことが取り沙汰されている。トランプ氏本人に言わせると、「ロシアと自分の関係が良いのであれば、そんなに素晴らしいことはない」などということを言っているが、プーチン大統領からすれば、ロシアにとって厄介な人間を敢えてアメリカ大統領に据えるようなことはしないだろう。ロシアにとって都合がよく、与し易い男を、敵国のリーダーにしたかっただけなのではないか。だとすれば、それはトランプ氏にとってもそれほど誇らしいことではない。